実家を売却する場合、相続前後でどう違う?
相続時にかかる主な税金
まずは基本的なこととして、実家の相続および売却に際して課される税金について確認します。主に以下の二つです。
【相続税】
相続が発生した場合に、相続遺産額に応じて相続人に対して課税されるのが「相続税」です。相続税は、相続した「遺産総額」に対して課されます。ただし、相続人が相続税の支払いによって困窮するようなことがないように、「控除」と「特例」という制度が設けられています。
ここでは「基礎控除」を説明します。基礎控除は相続人の対象条件がなく、誰でも利用できます。基礎控除額は、
[3,000万円+(600万円×相続人の数)]
となります。親の遺産を一人の子供が相続する場合は、遺産総額が3,600万円を超えなければ、非課税になります。
次に特例ですが、実家を相続する場合には「小規模宅地等の特例」が受けられます。相続した土地について、定められた要件・限度面積に応じ相続税評価額を減額するというもので、居住用に使っていた実家の土地ならば、330平方メートルを限度に80%まで減額されます。
【所得税】
実家を売却する際に、売却によって得た「譲渡所得(売却益)」には所得税および住民税が課されます。譲渡所得への課税については、対象となる住居の所有期間によって税率が変わってきます。所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」として所得税30%・住民税9%、5年を超える場合は「長期譲渡所得」として所得税15%・住民税5%になります(この他に「所得税額」×2.1%の復興特別所得税が課税されます。※2037年まで)。
ただし、不動産の譲渡所得への課税についても、「マイホーム(居住用財産)を売ったときの特例」があります。この特例は、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できるというものです。
実家の売却時期による課税状況の違い
では、実家を相続する前に売却する場合と、相続した後で売却する場合とでは、それぞれどのように課税されるのでしょうか。
1.実家を売却後に相続(譲渡所得が出たケース)
実家を売って売却益が出た場合には、譲渡所得に対する所得税が課されることになります。ただし、居住用財産を売ったときの特例により、3,000万円以下では非課税になります。仮に譲渡所得が5,000万円だとすると、2,000万円分について課税されます。長期譲渡所得が適用されるとして所得税が15%で300万円、住民税が5%で100万円、復興特別所得税が300万円×2.1%で63,000円、合計で4,063,000円になります。
続いて売却して現金化された資産の相続に対して相続税が課されますが、相続税についても前項の通り基礎控除があるので、その規定範囲内は非課税になります。子供が一人で相続する場合で、仮に相続財産総額が5,000万円だったなら、基礎控除分の3,600万円を引いた1,400万円が課税対象になります。相続財産総額3,000万円以下の相続税率は15%、さらに規定の控除額50万円を差し引くと税額は160万円になります。
前述した、小規模宅地等の特例による80%の控除は不動産として持っている事が前提なので適用されません。
2.実家を売却後に相続(譲渡所得が出ないケース)
実家を売却しても譲渡所得が出なかった場合には、不動産売却に関する所得税は発生しません。あとは、相続財産総額が相続税の基礎控除額を超えるかどうかによって課税の有無が分かれることになります。
3.相続後に実家を売却(譲渡所得が出たケース)
実家を不動産のまま相続する場合、土地・家屋の評価額に応じて相続税が課されます。本ケースでも相続税の基礎控除は適用されます。さらにこの場合は、土地面積が330平方メートル以下ならば「小規模宅地等の特例」が適用されるので、課税される相続財産総額が80%減額になります。上記同様1,400万円が課税対象となった場合、そこから80%分が減額されるので、最終的に280万円に相続税がかかることになります。相続財産総額1,000万円以下の税率は10%なので、相続税額は28万円 になります(子供一人相続の場合)。
続いて相続した実家を売却した場合の課税についてですが、所得税は前述の通り譲渡所得に対してかかってきます。ただし、相続した実家を一定期間内に売却した場合には、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できる「相続税が取得費に加算される特例」を適用することができます。これにより譲渡所得額を減額することができるわけです。
また、親と同居していて相続後も住み続けていたならば、居住用財産を売ったときの特例が適用されます。
4.相続後に実家を売却(譲渡所得が出ないケース)
状況に応じ相続税の課税があるかどうかだけになります。
相続税率、規定の控除額については、国税庁ホームページなどでご確認ください。
基本知識と個々の事情で正しい判断を
ここまで、子供が実家を相続する、実家を売却するという二つの行為について、時期の違いで課される税金がどのように変わるのかを見てきました。主に相続税と所得税について、税制上適用される控除と特例の基本的な規定はご理解いただけたかと思います。しかし、ここでの前提は、相続人が子供一人、親が5年を超えて実家に住んでいるなど、便宜的に設定した条件ですので、実際は相続前後どちらに売却した方が節税につながるかは、一概に判断がつきません。
生前に実家を売却するならば、親の住居はどうするか、その他個々の事情により他の税制上の特例も受けられるかなど、両者を正しく比較して結論を出すのは難しい面があります。相続人が複数いる場合はさらに複雑になりますので、現実的な話になった場合は税理士などの専門家に相談するのも一つの方法です。ただ、いずれにしても親にとっては大切な住まいですから、その意向を一番に考えるべきかもしれません。
こんな記事も読まれています
- 不動産のオーナー様向けコンテンツ
- 空き家を相続したらどうすればいい?
- 不動産のオーナー様向けコンテンツ
- 複数の相続人での不動産相続について
- 不動産のオーナー様向けコンテンツ
- 不動産のみを相続した場合の相続税について
- 不動産のオーナー様向けコンテンツ
- 不動産の購入が相続税対策に有効な理由
- 不動産のオーナー様向けコンテンツ
- 相続した不動産の名義変更について
不動産お役立ち情報
賃貸物件を探す
売買物件を探す
賃貸物件検索
コンテンツ一覧
会社案内
株式会社ナイス
〒420-0801
静岡県静岡市葵区東千代田3丁目6-2 MJ東千代田Ⅲ101号室
TEL:054-298-6900
FAX:054-298-6899
営業時間:9:00~18:00
定休日:水曜日/ 年末年始・夏季休暇
✉info@nice-shizuoka.com
スマートフォンサイト
スマートフォンサイトは、こちらからアクセスしてください。
不動産お役立ち情報
- 不動産お役立ち情報
- 売却は「売却理由」と「取引の流れ」が大切
- 住まいを売る契約の流れ
- 家の買い替えは、購入が先か売却が先か?
- 自宅に「住みながら上手に売る方法」とは
- 物件の引渡しまでに売主がしておく準備とは
- 仲介だけではない不動産売却の4つの方法
- 不動産価格の「相場」を知り上手に売るには
- 査定から成約までの「価格」の違いとは
- 売主が負う「契約不適合責任」とは
- 不動産売却時に必要な書類と取得方法
- 自力でも売れる?個人売買の可能性とリスク
- 「任意売却」でローン滞納の損害を最小限に
- 不動産の売却方法「仲介」を詳しく知ろう
- 「共同仲介」と「単独仲介」とは何か
- 不動産会社と結ぶ「媒介契約」の種類とは
- 売却時に選ぶ「一般媒介契約」とは
- 売却時に選ぶ専任・専属専任媒介契約とは
- 知っておきたい「買取保証付き仲介」とは
- 不動産の評価額はどのように決まるのか
- 住まいの買い換えの成否は資金計画がカギ
- 不動産を売るときの諸費用はいくらかかる?
- ローン残債がある住まいの抵当権抹消とは
- 土地売却時にかかる「譲渡所得」課税とは
- 売却時の「3000万円特別控除」とは
- 不動産売却後の確定申告は必要?不要?
- 住まいの買い換えで使う「つなぎ融資」とは
- 価格査定を複数会社に依頼する理由
- うまく使いたい「簡易査定」と「訪問査定」
- 中古一戸建てはどのように評価されるのか?
- 売れやすい土地の条件と売るための対策とは
- 土地は「古家付き」「更地」どちらで売る?
- 土地売却を円滑に進めるためのポイント
- 売却時に必要な土地の「境界確定測量」とは
- 「旗竿地」を売るために知っておきたいこと
- 農地はどうすれば売れる?地目の変更とは
- 住まいの売却時期を決める4つのポイント
- 築20年以上の家を売却するためのポイント
- 築30年超の古家の売却について
- 物件がなかなか売れない…その理由と対処法
- 「買取り」を利用してスムーズに不動産売却
- 売却を依頼する不動産会社はどう選ぶ
- 居住中の内見希望への対応ポイント
- 現地見学で物件をアピールする方法あれこれ
- マンションを有利な条件で売却する戦術とは
- 再建築不可物件を売却するときのポイント
- 「賃貸」にはない「持ち家」のメリットとは
- マンションVS一戸建て 選び方の基準は?
- 新築と中古どちらを買う?その違いを知ろう
- 購入物件の希望条件を整理する
- 住宅購入時は希望立地をよく考えよう
- 間取りの考え方を理解して住まいを選ぶ
- 世帯タイプ別の住まい選び
- 購入前に知っておきたい住まいの「階段」
- 「住宅の性能評価」とは
- 住宅資金の前にライフプランを考えよう
- 住まいを買う契約の流れ
- 物件購入の申込み前から売買契約までの流れ
- 物件の最終確認と残代金の精算・引渡し
- マイホームの引渡しから入居までの流れ
- 販売担当者との上手なコミュニケーション術
- 新築物件の内覧会と入居説明会について
- 入居後のトラブルへの対応について
- 住まいの「買いどき」について考えよう
- マイホームはいつ買う?判断する3つの基準
- 20代の住まい購入のポイント
- 30~40代の住まい購入のポイント
- 50~60代の住まい購入のポイント
- 一戸建て購入で大切な土地選び
- 建売住宅と注文住宅の特徴と違いとは?
- 意外に知らない「建築条件付き土地」とは
- 住まい方で違う「二世帯住宅」のタイプとは
- 一戸建ての新生活について
- 大規模?高層?マンションのタイプを知ろう
- 一戸建て感覚で住めるマンションとは
- 魅力的なマンションの共用施設・サービス
- マンションの新生活について
- 注目の「リノベーション物件」とは
- 理想への近道は「中古+リノベーション」
- 「建物状況調査(インスペクション)」とは
- 資金計画を考えよう! 諸費用も忘れずに
- 年収、ローン…家の購入予算はどう決める?
- 住宅購入時に「頭金」はどのくらい必要か
- 予算よりも高い物件は買える?その方法は?
- 住宅購入に必要な初期費用とは
- ローン以外に住まい購入後にかかる費用は
- 住宅ローンを利用するメリットについて
- 住宅ローンにはどんな種類がある?
- 住宅ローンの金利タイプとは
- 住宅ローンの返済方法について
- 住宅ローンの返済期間はどう考える
- 住宅ローンの審査基準ってどういうもの?
- 住宅ローンのボーナス返済とは
- 住宅ローンの申込みから融資実行までの流れ
- 返済で失敗しない適正な住宅ローンの組み方
- 「フラット35」について
- 住宅ローン返済を楽にする「繰上げ返済」
- 共働き世帯のための住宅ローンとは
- 住宅ローンの借り換えについて
- 家を買い替える強い味方「買い替えローン」
- 購入時に考えるべき「住まいの将来性」とは
- 購入時に考えるべき住まいの「資産価値」
- 一戸建て見学時の留意点
- マンション見学時の留意点
- 物件以外にも重要な現地確認とは
- 購入申込みは何をする?留意点は?
- 売買契約時の留意点とは
- 「重要事項説明」と注意点について
- 不動産登記手続きを知っておこう
- 副業としての不動産投資を考える
- 不動産投資とはどういうものかを知ろう
- 投資物件の種目ごとのメリット・デメリット
- 不動産投資で重要な「利回り」を理解しよう
- オーナーチェンジ物件での投資とは
- 不動産投資の節税効果とは
- 不動産投資のリスクを減らす分散投資とは
- 不動産投資の概要~目的に合った投資を~
- マンション投資で重要な「管理状況」とは
- 防犯性の高いマンションの投資効果と確認点
- 遠方への転勤時、持ち家は売却か?賃貸か?
- なぜ土地活用が必要なのか
- 土地活用方法それぞれの魅力とは
- 不動産投資の必要経費と確定申告について
- 賃貸経営でのランニングコストについて
- 「不動産投資ローン」を知ろう
- 賃貸経営で必要な「修繕」について考えよう
- 「リバースモーゲージ」とはどんなもの?
- 空室対策の基本ポイント
- 賃貸経営で発生するトラブル・苦情への対応
- 「家賃滞納」時にオーナーはどう対応するか
- 「家賃保証会社」とはどういうもの?
- 退去時の原状回復義務と敷金返還について
- 所有物件の「付加価値」を高めるリフォーム
- ライバル物件に差をつけるリフォーム活用法
- 賃貸物件入居者のプチリフォームについて
- 賃貸管理サービスについて
- 賃貸管理はプロに任せるのが安心な理由
- 住まいを貸す契約の流れ
- 空き家を相続したらどうすればいい?
- 複数の相続人での不動産相続について
- 実家を売却する場合、相続前後でどう違う?
- 不動産のみを相続した場合の相続税について
- 不動産の購入が相続税対策に有効な理由
- 相続した不動産の名義変更について
- 起業の形は法人設立と個人事業主のどっち?
- 店舗開業の手順 コンセプト固め~開店まで
- 「店舗コンセプト」が重要な理由と設定方法
- 店舗開業成功のカギ!事業計画書の作り方
- 商圏調査の基本とは?長く続けるお店づくり
- 貸店舗物件の種類・特徴を知ろう
- 事業用賃貸物件と居住用賃貸物件はどう違う
- 店舗経営に伴うリスクと備えについて
- 店舗物件の「二度の引渡し」とは
- 事業主が知っておくべき店舗の内装制限とは
- フランチャイズという起業の選択肢を考える
- リースバック方式での新規店舗開業について
- 個人開業で知っておくべき確定申告について
- 「商店会」などの団体について
- 店舗開業時にかかる費用には何がある?
- 開業資金の準備・調達について
- 「開業費」「創立費」の取り扱いと節税効果
- 事業用不動産賃貸借での「権利金」について
- 入居する店舗はどう選ぶか
- 失敗しない「出店場所選び」をするために
- 事業の成否を左右する出店立地について
- 居抜き物件で開業するメリット・デメリット
- スケルトン物件を選ぶメリット・デメリット
- 「空中店舗」での集客を考える
- 店舗開業に必要な手続き・資格について
- 「飲食店営業許可」と申請手続きについて
- 深夜営業するときの届け出と注意すべきこと
- 店舗の賃貸借契約時の留意点
- 失敗しないための店舗デザインの考え方
- 店舗レイアウトを考えよう
- 店舗内外装デザインから施工の依頼について
- 店舗施工でまず重要な見積もりとその見方
- 店舗施工で失敗しない依頼先選定時の注意点
- バリアフリーを考えた店舗づくりについて
- 店舗の外装について知っておくべきこと
- アパートとマンション、どちらがいいの?
- タウンハウスとテラスハウスはどんなもの?
- 賃貸で一戸建てに住むという選択肢
- 住みたい物件の希望条件を整理しよう
- もう迷わない!候補物件の絞り方・選び方
- 賃貸住み替え、物件を絞り込む3ステップ
- 希望の立地条件を考える
- 住み心地を左右する住まいの設備・仕様
- 気になるセキュリティー対策を確認しよう
- インターネット環境は事前に確認しよう
- 南向き以外も魅力!方角選びのヒント
- アパート・マンションの管理形態を知ろう
- 子育て世帯の賃貸物件の選び方
- ペットと暮らすための部屋選び
- 住む期間に合わせた物件選びをしよう
- 住まい選び~駅から離れた物件について~
- 検討の価値あり!女性専用物件とは
- 「家具・家電付き物件」を借りるという選択
- 家賃月額予算は全体支出をイメージしよう
- 家賃の上限はどれくらい?考慮すべきは何?
- 学生一人暮らしの家賃上限はどう考える
- 家賃の相場を調べよう
- 賃貸物件の管理費・共益費って何?
- 賃貸住宅の初期費用には何がある?
- 敷金・礼金・更新料についてきちんと知ろう
- 引越し費用について考えよう
- 新生活で必要なものを予算内でそろえるには
- 不動産会社に相談・訪問するときのポイント
- 安心して不動産会社に行くために
- 物件内見の準備と注意点について
- 内見時のチェックポイント
- 内見での室内・建物周りのチェックポイント
- 快適な暮らしに不可欠な周辺環境をチェック
- 住まいを借りる契約の流れ
- 住みたい物件を決めたら入居申込みをしよう
- 入居審査ってどういうもの?
- 賃貸借契約時に必要な書類とお金について
- 契約前の「重要事項説明」について
- 住まいの賃貸借契約で確認しておくべきこと
- 「家賃保証会社」の利用とはどういうものか
- 賃貸物件の借主側からの中途解約について
- 退去時の原状回復と敷金について
- 引越し会社の選び方
- 引越し準備と当日の流れ
- 引越し前に新居の掃除と原状確認をしよう
- 効率的に引越し当日をこなすための注意点
- 引越し時のチェックポイント
- 引越しのときのゴミはどうやって処分する?
- 不用品・大きなゴミの処分について
- 役所への届け出など新生活に必要な手続き
- 引越し直後から快適に暮らすために
- 間取り図を見て新生活をイメージしよう
- 快適に暮らすために居住ルールを確認しよう
- 近隣へのあいさつで安心・円滑なお付き合い
- 町内会・自治会は加入必須?メリットは?